所長が綴る介護レポート 

(掲載順不同)

大好きな自宅で最期

 年明けすぐに永眠されたご利用者様がみえました。Oさんは、前日の朝、尿カテーテルが抜けた状態でベットに座ってみえたとの事で、ご家族が病院へ連れて行くので昼の訪問はキャンセル。夕方訪問に入らせていただくと、腹痛を訴えられた為、ご家族に連絡すると「どうも室内で転倒したようで、肋骨にひびが入っている」との報告を受け、ご家族と相談して翌日のデイを訪問に変更。   

 翌日のお昼に訪問するとOさんは、いつもの座椅子に心肺停止の状態で座ってみえました。救急車を要請し、ご家族に連絡。救急車到着まで心臓マッサージをするも、搬送先の病院で死亡が確認されました。大好きなご自宅での最期の表情は、とても安らかなお顔をしてみえました。この出来事は、小規模多機能の目的を改めて考える事となりました。


認知症の父の笑顔

 1年前に施設に入所されたHさんの娘さんからで「今朝父が永眠しました。」との事でした。Oさんは、要介護4で持病と認知症もかなり進んでいて導尿が必要で、毎日の通いと週5日のお泊まりを組み合わせてご利用してみえましたが、介護者の奥様が病に倒れられてからは、近くに住む娘さんが、介護をしてみえました。フルタイムの仕事をされ、跡取りの家に嫁ぎ、お母様とOさんの二人の介護と私達からみても並大抵の大変さでした。そして、Oさんを施設に入所という苦渋の選択をされました。それから1年。

  棺に横たわるOさんのお顔は、穏やかな表情でした。訃報の報告をうけ、今できる事は・・?と思った時、パソコンに保存されているOさんのここで過ごされた時の写真をプリントアウトして、お通夜の前にご家族にわたしました。後日娘さんと息子さんが来所され、写真をみて癒やされたことや認知症の父親が生きていて楽しいことがあるのだろうか・・?と思った時期があったが、写真に写る父の笑顔をみた時に<もみの木の家>で良かったと気持ちがすっきりしました。もみの木の家で過ごした分だけ、長生きでき天寿をまっとうできました。との言葉をいただき、なんだか嬉しかったです。

    


高次脳機能障害の取り組みと対応

  小規模多機能型居宅介護事業所<もみの木の家>では、昨年12月19日に中川区生涯学習センターにて名古屋市総合リハビリテーションセンターの長谷川真也さんを講師にお招きして、高次脳機能障害セミナー<高次脳機能障害とは、その支援について>を開催いたしました。ケアマネージャーの方を対象としたセミナーで、年の瀬もおし迫った時期にもかかわらず、30名近い方々が参加していただきました。

 さて、今なぜ高次脳機能障害なのか・・になりますが、それはちょうど1年前に47才のAさん(要介護3女性)のご利用開始がきっかけとなります。一昨年の秋にくも膜下出血に続いて脳梗塞を発症。その結果、高次脳機能障害が後遺症として残りました。その年は、長男の高校受験が控えており、私学の入試が近づくにつれ、入院先の病院でも落ち着きがなくなり退院を迫られている、との事で、退院後すぐに<もみの木の家>の利用されるようになりました。

 ご利用当初Aさんは、感情を抑えることができず、話す言葉は『帰りたい』『寝たい』『お風呂に入りたい』の繰り返しで、最期には『お願いします』と土下座をされる毎日でした。ご自宅でもこの調子で、とまどう家族。中学生の娘さんから泣きながら、『今日は母をお泊まりにして下さい』と電話がある事もありました。スタッフも、どうするのが彼女にとっていいのか?どうすれば彼女のモチベーションをあげる事ができるのか?を何度も何度も話し合いました。

  あれから1年が経過し、Aさんはグループ内の作業療法士の先生のリハビリを週に何度か受けながら、毎日の通いと週3日のお泊まりを利用されています。今では『お願いします』も土下座もなくなりました。

 Aさんとの出会いを通じて、高次脳機能障害の人達の受け皿がとても少なく限られている事を知りました。そして、高次脳機能障害の人達やご家族はとても厳しい状況の中で、日々の暮らしをしてみえるように感じます。

 今年になってから、セミナーに参加いただいたケアマネージャーの方々にお会いしてお話をきく機会があり、『とても参考になりました』という感想をいただきました。皆さん、ご利用者様に高次脳機能障害の方がいらっしゃるとの事でした。

  <もみの木の家>では、これを機に高次脳機能障害の方々に門戸を広げようと考えています。



台風と一人暮らし


 10月8日 何年ぶりかに台風が愛知県に上陸しました。

 現在<もみの木>には、2名(Aさん・Bさん)の利用者の方が独居生活をしてみえます。Aさんは要介護4で杖歩行ですが、ご自宅ではベットに寝たきり。Bさんは、要介護1で前の週に病院を退院したばかり。お二人とも木造アパートの1階に住居がありAさん宅は浸水経験があります。

 6日の夕方、スタッフが話合い7日午前の訪問に入ったスタッフがAさんにお泊まり利用を勧め、午後の訪問を通いサービスに変更そのままお泊まりし、8日はそのまま通いサービスを実施。

 Bさんは、退院後のメンタル面を配慮し通いサービスから訪問サービスに切り替えた経緯がある為、お泊まりサービスは無理と判断。後見人のご家族に連絡すると「今まで浸水の経験はないので大丈夫ですよ」との事で、7日の夜はご家族との連絡を取りながらの対応となりました。叉、認知症の要介護4の奥様(Cさん)を介護しているご主人からは「自宅が堤防沿いにあり、避難勧告が出た場合、妻を連れて避難するのは困難なので、お泊まりをさせて欲しい。」とのご要望があり、サービスを実施しました。段々と風雨が強まる中、居室ではお泊まり利用の方々の安らかな寝息(中には大きな鼾の方も・・)が聞こえ、そんななか台風が通過し無事朝を迎えほっとしました。朝、Cさんのご主人に連絡すると「浸水することもなく良かったよ。」と明るい声でこちらも一安心。Aさんも「独りでは不安だったけど泊まれて良かった。」とおっしゃってくださりスタッフも笑顔。

 <もみの木の家>では独居の方、老々介護の方のご利用者様も少なくない状況の中で、今回のような場合を含め、その時々に適した対応を考え、不安を解消しつつ利用者の方やご家族が住み慣れた環境の中でいかに少しでも長く生活が続けられるかを考えサポートしてゆきたいと思います。